新潟県内で選抜したスギ雄性不稔個体(新大1号,新大5号)の小胞子形成過程と遺伝様式を明らかにするとともに,富山不稔個体(富山MS)との差異について検討した。新大1号,新大5号の雄花および針葉の形態は正常個体と同じであった。しかし,形成された小胞子は,どちらも正常に発達せず,収縮して互いに癒着し,花粉飛散期には塊状となった。新大1号,新大5号の小胞子の退化過程はそれぞれ異なるとともに,小胞子が膨張し退化する富山MSとも異なった。新大1号,新大5号のF1苗は全て正常な花粉を形成したが,F2苗では正常個体と不稔個体が3:1に分離した。新大1号の戻し交配苗では,正常個体と不稔個体が1:1に分離した。また,新大1号と富山MSのF1および,新大5号と富山MSのF1,および新大5号と新大1号のF1との交配によって得られた苗のすべてが,正常な花粉を形成した。このことから,新大1号,新大5号,富山MSは,それぞれ異なる一対の核内劣性遺伝子に支配された雄性不稔性であると判断された。