持続可能な森林経営の実現には,量的に安定した木材供給が可能な森林への移行が必要不可欠である。本論では,そのための森林施業方式について,法正林誘導と伐期変更の二つを想定して検証した。対象地は愛媛県久万町の民有スギ林とし,森林資源予測モデルを用いて森林蓄積量および素材生産量の経年変化を推計し,それらの結果を比較した。モデルは森林を林分群として捉えて林分密度管理図を用いて構成しており,想定した施業下での森林推移を予測する。施業シナリオは,対象森林の齢級構成を法正配置へ誘導する場合としない場合の2方針のもとで,伐期の異なる2施業(50年伐期,100年伐期)を実施する,4シナリオを設定した。検証の結果,木材の安定供給を図る上で,法正林誘導の高い有効性と,伐期変更の影響の少なさが明らかになった。以上から,今後の久万町民有スギ林の取扱いにおいては,法正林誘導を基本に,森林蓄積量や素材生産量などの目標値は伐期で調整する方針を選択すべきと考えられる。