南九州での Beauveria bassiana 培養シート型不織布製剤 (不織布) によるマツノマダラカミキリ成虫防除の有効性を確かめるため,2003年5月に野外での防除を想定して約1m3の被害材を野外の網室内に集積し,処理区では材の表面に不織布を2,500cm2を固定して置き,対照区ではそのまま,材全体を二つの底辺50cm,高さ40cmの三角形の開口部があるブルーシートで覆った。各網室で捕獲したマツノマダラカミキリ成虫を個別飼育し,生存期間と B. bassiana の叢生を調査した。菌の感染は,成虫の1日あたりの平均後食面積に影響を与えていなかった。対照区と処理区の脱出個体のそれぞれ2%と34%で叢生がみられ,捕獲後15日間で対照区の脱出個体の20%,処理区の脱出個体の52%が死亡した。処理区の脱出個体の死亡率は,2001年に同じ場所で0.2m3の被害材に対して行った同様の試験結果ほぼ等しく,材積あたりの施用量が同じであれば,同等の防除効果が得られることが確かめられた。しかし,今回の叢生率と死亡率は,関東地方での試験結果より低かった。これらの結果をもとに,成虫の活動時期に気温が高く降水量の多い南九州における不織布によるカミキリ成虫駆除効果の向上に向けての問題点について考察した。