高齢林の林分構造と斜面位置の関係を明らかにするために,無間伐の90年生ヒノキ高齢林を対象に斜面位置と立木のサイズ分布および空間配置の関係を解析した。調査地が急傾斜であったために斜面上部から下部にかけて比較的短い距離(45 m)で林分構造に大きな違いがみられた。斜面上部では立木の空間配置が集中分布を示し,立木密度が高く,個体サイズおよび材積合計が小さくなった。また,斜面上部では広葉樹が侵入し,ヒノキと競合していた。斜面中部および下部においては自己間引きが進行した結果,立木の空間配置が一定間隔分布を示し,斜面上部と比較して立木密度が低く,個体サイズおよび材積合計が大きかった。また,広葉樹の本数が少なく,ヒノキよりも小さかった。急峻な立地の高齢林では,狭い範囲であっても斜面位置に応じて立木の成長量や自己間引きの進行速度,広葉樹の侵入する様相に著しい差が生じることから,斜面位置を考慮に入れた施業・管理計画を実施する必要があると考えられる。