本研究は民有林のうちの人工林(以下,人工林と記す)において,京都議定書3条4項に規定された森林(以下,FM林と示す)の齢級別,普通林・保安林種別面積を推定し,それをもとに今後FM林面積を拡大するための方策を検討した。齢級別,普通林・保安林種別にFM林面積を推定する際には,森林簿と1990年から2000年までの施業履歴を使用した。さらにFM林を拡大する方策を検討するうえでは,齢級ごとに支給された補助金額も参考にした。推定されたFM林は一部の保安林を除いて若齢級に偏った分布を示した。また,8齢級以上の森林施業に支給される補助金はわずかであり,補助金によるFM林の誘導は10年以内に限界に達することが明らかになった。一方,現行の全国森林計画には,複層林施業,長伐期施業による高齢林の育成を目指すという方向性が記載されている。そこで,通常の間伐事業に加え,森林施業計画の実施を条件とした団地単位の補助事業によってFM林を算入し,森林計画制度の実効性を高めてゆくことが効果的な方策であると結論された。