高蓄積の秋田スギ天然林を構成する天然スギ10本(樹齢162∼255年生)について,樹幹解析の手法により個体の成長解析を行った。胸高断面積定期平均成長量の変化から,天然林内では1802年前後に大規な撹乱があり,その後は1924年の間伐まで無撹乱の状態が続いたものと推察された。樹高と胸高断面積の定期平均成長量はすべての個体とも50年生前後まで低く,それ以降の樹高成長が盛んな時期は,スギ人工林と同等の高い定期平均成長量を示した。樹高の定期平均成長量が減退しても,胸高断面積の定期平均成長量は80年生以降ほぼ一定の成長を続けた。胸高断面積定期平均成長量は1924年の間伐時は優勢木を除く9本で間伐後10∼20年間成長量が増加し,さらに上層木6本で1802年前後から以後30∼100年間成長量の増加が認められた。解析木の形状比は成長とともに優勢木では70より低く,平均木以下では90前後の高い状態で推移した。幹材積定期平均成長量は70∼100年生頃から最大になり,その後も最大成長を保った個体が多く,優勢木では100年以降に0.12 m3 yr-1を超え,伐採されるまで最大の成長量を続けていた。