下層植生からみた剥皮害の発生傾向を明らかにすることを目的として,熊本県球磨地域のヒノキ人工林77地点を対象に,剥皮害木本数と下層植生との関連性を検討した。まず,下層植生の繁茂状況をデジタルカメラを用いて撮影し,定量化した。また,下層植生の種組成データを基に,TWINSPANにより調査点を三つの植生タイプに分類した(スズタケタイプ,先駆種タイプ,常緑高木種タイプ)。次に,下層植生が繁茂している調査点では剥皮害木本数が低く抑えられているのか,ブートストラップ法により検討した。その結果,常緑高木種タイプの調査点においてのみ,下層植生の繁茂状況が剥皮害木本数の多寡に影響していたことが明らかとなった。これは,下層植生による物理的,視覚的な遮蔽効果によるものであると考えられた。