森林の水土保全機能に配慮した森林整備に関わる効果的な説明責任を実践するために,北海道東部にある常呂川・網走川流域において実施された台風による被災住民に対するアンケートの調査結果を解析した。単純集計の結果によれば,両流域の住民は森林の現況に対して減退しているイメージをもっていた。数量化III類により,森林や災害リスクへの認識は,六つの因子に区分された。網走川下流部に代表される都市住民は地域を認識する機会は少なく,流域森林の状況に対しても減退のイメージをもっていた。一方,常呂川中流部に代表される一次産業従事者は地域を認識する機会が多く,流域の森林に対しても肯定的イメージをもち,水害への当事者意識が高いことが示された。流域住民の多くは,災害抑制を目的とした地域森林の整備への参加に積極的姿勢を示したが,姿勢の背景となる各住民の森林との接触機会や被災経験などには差異がみられた。森林整備に係る情報提供においては,科学的データに基づく流域森林の状況,河川改修,水害発生の原因についての説明が必要であり,異なる意識や経験をもつ人々が地域の水土保全機能を主目的とした森林整備に対して首尾一貫した理解を示すことも重要である。