北海道北部の森林生態系において,掻き起こしによる地表処理が土壌窒素動態に与える影響と経年変化のメカニズムを解明するために,土壌の溶存窒素,微生物バイオマスおよび植生の窒素蓄積,土壌窒素無機化について調べた。掻き起こし処理区における土壌NO3-Nプールは処理後1∼3年目までは対照区よりも多く,その後は徐々に減少した。処理後3年目まで土壌NO3-N現存量が高くなるのは,処理による植生の窒素吸収の減少のみならず,表土除去が土壌微生物へのエネルギー源である炭素の不足を引き起こし,正味窒素有機化が減少し,正味硝化速度が増加したことが要因であった。処理後の年数経過に伴う土壌NO3-N現存量の減少は,処理後2∼3年目までは土壌からのNO3-N溶脱が主因と推察され,それ以降は回復した植生への窒素蓄積の影響が高まっていた。処理後5年においても,土壌の正味硝化速度は依然として高く,土壌窒素動態に対する掻き起こし処理の影響は数年間スケールで持続されていた。