照葉樹林の主要樹種の台風被害の特性を把握するため,LTERで蓄積された強さの異なる3回の台風撹乱のデータを比較,解析した。風速2乗,前の撹乱からの経過年数,空間分布の偏りを独立変数にしたステップワイズ法による重回帰分析の結果,5種は風速2乗のみで被害割合((根返り幹数+幹折れ幹数)/台風直前生存幹数)を説明できた。その5種の風速2乗と被害割合の回帰直線の傾きは種間で有意に異なった。数種では風速2乗以外も有効な変数として採択されたが,多くの種で風速2乗が最も大きい影響を示した。また,被害のうち幹折れの割合が種や台風に関わらず高い値を示した。以上の結果から,1)種特性としての風害に対する抵抗性(高いイスノキなどや低いタブノキなど),2)上記抵抗性以外の要因が被害量に及ぼす影響の種間差,3)幹折れが多いのはサイトの特徴であることの3点が明らかになった。本研究で示したように,稀なイベントに対する森林の反応の評価には,LTERは有効といえる。