流域水収支計測は,森林蒸発散を調べる基本的な方法だが,近年,流域水収支データに基づく研究はあまり盛んではなく,フラックス計測や樹液流計測などに基づくプロセス研究の方が盛んである。本稿は,このようなプロセス研究優位の状況がどのような歴史的経緯によってもたらされたかを概観した上で,プロセス研究によって流域水収支データの存在を代替することができないことを,計測の精度と実行可能性の両面から指摘した。本稿ではさらに,プロセス研究と流域水収支データの協働によって新たな知見が生み出されることを,実例をあげて説明した。また,このような協働によって,今後検討されるべき研究テーマを列挙するとともに,協働促進のための環境整備について提案を行った。