秋田県の佐渡スギ群落保護林において,その成立過程をスギ伐根の年輪解析によって推定した。25 ha内の3カ所のスギの風倒木43本の伐根から円板を採取した。伐根径の平均は62 cm,伐採面の年輪数は平均235年であった。伐採高に達するまでの年数を推定し,それを伐採面の年輪数に加えて求めた発生時期は西暦1681∼1731年と推定された。現在,保護林内に生育しているスギ成木(dbh 30 cm未満),幼樹(dbh 5 cm未満)の直径と肥大成長の関係から生育環境(ギャップ下,林冠下)を求める判別式を作成し,それを供試木43本に当てはめて過去の生育環境を推測した。その結果,スギは発生当初は良好な環境下にあったが成長が一度低下し,西暦1790年頃にほとんどの供試木の成長が改善するパターンがみられた。平均発生年,成長改善の平均年とも円板を採取した3カ所の間では違いがみられなかった。以上の結果から,この林分では過去に2回の広域で強度な撹乱があり,最初の撹乱で現存しているスギが発生し,2回目の撹乱で成長が改善されたと推察された。近隣の履歴などから,撹乱はいずれも伐採によるものと考えられ,最初はスギが,2回目ではその後に生育した広葉樹が主に伐採されたと推察した。