弱病原性のマツノザイセンチュウ(以下,弱線虫とする)をマツにあらかじめ接種するとマツ材線虫病の発病率や枯死率が抑制されるという誘導抵抗性現象を,クロマツの遺伝的要因を考慮して検証した。満1年生の5家系の実生苗を対象に,家系ごとに弱線虫接種区と滅菌蒸留水接種区(コントロール)を設け,強病原性のマツノザイセンチュウ(以下,強線虫とする)接種17週後の病徴を調べた。その結果,発病率や枯死率はクロマツの家系,強線虫の系統,苗高によって左右されたが,弱線虫接種の有無には左右されなかった。さらに,満2∼3年生の挿し木クローン苗を使って弱線虫接種区とコントロールのクロマツの遺伝的ばらつきを同じにした場合も,両区の発病率や枯死率に差はなかった。このように,コントロールとの遺伝的ばらつきを抑えた場合,誘導抵抗性は認められなかった。したがって,誘導抵抗性は弱線虫を接種したマツに普遍的にみられる現象ではないと考えられた。