山形県庄内平野の赤川河川敷において,外来植物であるニセアカシアの分布拡大に対する種子の役割,特に,土壌シードバンクが新規の個体群形成に貢献しているか調査した。植生図を用いて解析した結果,水平根では到達困難な距離にもニセアカシアのパッチは存在しており,全パッチ数の1/3に及んでいた。さらに,5年間の植生図の推移を追うと,新規パッチ30個中,12個が種子によって新規に形成されたと推察された。ニセアカシアは硬皮休眠種子を生産するため,土壌シードバンクを形成すると考えられる。土壌シードバンクの分布パターンを調査すると,同種の林冠下には平均で60粒/m2以上の埋土種子が存在したが,ニセアカシア林以外の植生ではほとんどみつからなかった。このことから,土壌シードバンクはすでにニセアカシア林が存在する場所が撹乱を受けた場合の再生・維持には有効だが,同種の存在しない場所で新規に個体群を形成するのは不可能と考えられた。したがって,散布種子が直ちに発芽することによって,林分が創出されていると推察された。今後は,根萌芽だけでなく種子からの再生も考慮に入れた制御方法の考案が急務である。