アオダモの発芽特性を知るために,山形県庄内地方で採取した果実を用いて発芽実験を行った。無処理の果実は5°Cでは休止状態にありほとんど発芽しなかったが,10∼25°C域のそれぞれの温度条件下では90%以上ときわめて高い発芽率を示したため,アオダモ果実は休眠性をもたないと考えられる。ただし,果皮を除去して種子を裸出させると,無処理の果実に比べて発芽速度が促進されたので,果皮による発芽遅延の効果があることがわかった。発芽遅延のメカニズムは,果皮が機械的に種子の発芽を抑制していることによって生じており,3カ月の低温湿層処理を経験すると解除された。11月の散布直後に降雪が始まる東北日本海側では,果実が休眠性をもたなくても,果皮による発芽遅延の作用をもつだけで,秋の誤発芽を防止できると思われる。果実の発芽遅延は,冬期の低温湿潤条件下で解除されることで,春先に一斉に発芽できると考えられた。アオダモ果実が休眠性を示さないことは,北海道産の果実で行われた先行研究の結論と異なることから,個体が生育する場所によって果実の発芽・休眠反応が異なる地理変異を示すと考えられる。