針葉樹人工林内への広葉樹の侵入および成長過程を明らかにし,それらに対する施業の影響を検討するため,北海道の80年生のトドマツ人工林において,広葉樹の樹種構成と,それらの地上0.3 mの年輪数,胸高における肥大成長量を調べた。広葉樹の種数や密度は4回の間伐を経て増加していた。地上0.3 mにおける年輪数の頻度は,初回間伐を除いた各間伐翌年に集中しており,間伐が広葉樹の侵入契機となっていると考えられた。また多くの広葉樹で間伐年から翌年にかけて成長量が増大しており,間伐は広葉樹の成長契機であることも明らかとなった。広葉樹の成長量は生態的特性によって異なり,遷移後期種と比べて中間種の成長量は全体的に大きく,間伐による成長の増大量も大きかった。また,成長量の増大が認められる個体割合や増大回数は,より早期に侵入した高齢の個体ほど大きかった。これらの結果から広葉樹の成長過程は,広葉樹の生態的特性や侵入時期により異なり,成長に対する間伐の影響もそれらによって異なると考えられた。