ブナとイヌブナについて豊凶現象,落葉量,BA成長量を12年間にわたり調査し,豊凶現象が樹体の成長にどのような影響を与えるのかについて明らかにした。豊凶現象と落葉量の関連については,両樹種とも堅果と殻斗の落下量が多い年ほど落葉量が少ない傾向がみられ,豊作・並作年には凶作・不作年に比べて葉の生産量が減少していると考えられた。また,豊作年にBA成長量が減少する傾向が認められ,その傾向は豊作から数年間みられた。以上の結果から,ブナとイヌブナは開花・結実のために大量の貯蔵物質と光合成生産物を生殖器官に分配し,それによって消費した資源を回復するために少なくとも数年間を要することが示唆された。