トドマツの材質改良のため,異なる環境における年輪構造と遺伝的変異をX線デンシトメトリ法で検討した。供試木は美唄と厚岸の精英樹準次代検定林より採取した林齢32∼40年生のトドマツ精英樹家系で,美唄で74家系444個体,厚岸で24家系96個体であった。解析の項目は年輪幅(RW), 早材幅(EW),晩材幅(LW),年輪密支場度(RD),早材密度(ED),晩材密度(LD)の6形質であった。夏季の低温と日照時間の不足の影響で厚岸のLDとLWの値は美唄よりも小さかった。狭義の遺伝率は美唄では幅が0.17∼0.27で,密度が0.26∼0.34,厚岸では幅が0.47∼0.79で密度が0.26∼0.66であった。厚岸の晩材幅と晩材密度の狭義の遺伝率は他の形質と異なった結果となり,夏期の天候が影響していると考えられた。検定林で共通の23家系を用いた解析で地域内家系と検定林間の交互作用はLWとRDとEDとLDで認められ,成長や気象害・病害抵抗性と同様に,材密度においてもトドマツの需給区分の必要性が確認された。