ミズナラの豊凶を簡便にかつ迅速に判定する方法を検討するため,Koenig et al .(1994)の方法を試行した。2007年の秋に13本のミズナラを対象に水井(1991)の方法による結実度(枝先50 cmの平均着果数;以下,水井式結実度)を測定すると同時に,双眼鏡で樹冠を30秒間観察して堅果数をカウントした(以下,Koenig式結実度)。水井式結実度は1個体あたり6本の枝をサンプリングして平均して求めた。Koenig式結実度は,のべ8人の観測者が1個体あたり観測を9回繰り返して測定した。水井式結実度を目的変数( y ),Koenig式結実度を説明変数( x )として,べき乗関数( y = axb )を非線形回帰分析で各観測者にあてはめた結果, a =1.4~1.8, b =0.32~0.37と推定され(自由度調整済み決定係数=0.44~0.56),ある観測者はカウント数が他の観測者よりも有意に少ないという現象がみられた。また,他の付随する誤差として,ある観測者は拡大率の高い(=実視界の狭い)双眼鏡を用いたときにカウント数が有意に低下する傾向もみられた。本研究で試した方法を実地へ応用する際,1個体あたりの観測回数は6回程度でよいが,個人差や用いる双眼鏡の差を補正し,観測値を標準化するように注意を払う必要がある。