抵抗性程度の異なるクロマツ6家系について,マツノザイセンチュウを接種した3年生実生苗の組織の変性と個体の枯死との関係を明らかにした。蒸留水を処理したクロマツ切り枝では褐変の程度が小さかったが,マツノザイセンチュウを接種した切り枝は接種の3~8日後に褐変が大きく進行した。最終的には,接種した切り枝はすべて褐変し,マツノザイセンチュウに組織レベルで完全な抵抗性をもつ苗木は存在しなかった。切り枝が完全褐変に至る日数と苗木が枯死に至る日数との間には,1%水準で有意な正の相関(Spearmanの順位相関係数0.607)が認められた。これらの結果から,マツノザイセンチュウを接種した場合,組織の褐変が遅いクロマツ実生苗は枯死が遅い傾向にあり,組織の抵抗性は個体の抵抗性に関与していると推察された。