樹高成長は, 樹種や立地条件に依存して変化し, ある高さ以上になると停止する。決定された最大樹高は, 光をめぐる資源獲得競争での優位性や群落の階層構造の発達, 森林の生産性を規定する要因として重要である。近年, 樹冠へアクセスするシステムや技術が発達し, 数十メートルにも及ぶ高木の樹冠における生理学的測定が可能となった。その結果, 土壌からの水輸送の限界による個葉光合成速度の低下や, 重力による水ポテンシャルの低下によるシュートや葉における細胞の伸長抑制などといった生理学的要因によって樹高成長が制限される可能性が示された。また理論研究や操作実験などから, 自重や風圧に対する力学的支持機能や老化による遺伝的な変化に関しては, 樹高成長の制限要因としての寄与は低いことが示唆されている。今後は樹高成長制限が天然林での遷移過程や個体間の相互作用, 群落の発達機構などにどのように影響しているかを明らかにすることで, 樹高成長の包括的な理解と森林の生産性予測などへの応用が可能になると考えられる。