施業履歴の異なる100年生前後のヒノキ人工林6林分について, その施業履歴, 林分構造そして植栽木の品等構成を調査し, 過去の間伐を中心とした取り扱いの違いが, これらに及ぼす影響を解析した。林分の本数密度, 幹材積は, 31年生時を最後に間伐が全く行われていない林分で843本/ha, 1,298.9 m3/ha と最も高く, 間伐回数の多いほど少なくなる傾向がみられた。本数密度を50年生までに500∼1,000本/ha以下に落としておけば, その後に間伐を省略しても高蓄積の高齢級人工林の造成が可能であることが示唆された。立木の品等は, サイズの大きな個体で良形質木の割合が高くなる傾向を示した。各林分における品等構成では, 間伐回数が多い林分にあっても不良形質木が存在した一方, 良形質木の本数は間伐の回数に関係なく100∼150本/haの密度で存在した。この結果から, 過去の間伐は対象林分における品等構成の向上にはつながってこなかったことが明らかにされた。その背景は今回のデータからは明らかにできなかったが, 良形質木からなる高蓄積の高齢級人工林を造成するためには, 少なくとも若齢段階の間伐における不良形質木の除去が重要であることが示唆された。