急峻な立地に成立する約80年生の照葉樹二次林において, 10年間の樹木の動態を調査し, 各樹種の台風撹乱の受け方に地形および二次林特有の林分構造がどのように影響するかを主要構成種5種を中心に明らかにした。出現樹種全体の台風被害の分析結果から, 下部斜面で台風による幹折れや根返りなどの直接的撹乱, および巻き添え撹乱を受けやすいことが明らかとなった。これは, 下部谷壁斜面の地表の不安定性による撹乱の起きやすさを反映しており, このことが下部斜面における立木密度の低い要因の一つであると考えられた。一方, 幹折れや根返りの台風撹乱率は林冠層で高く, 逆に巻き添えによる撹乱は下層の幹ほど多かったことから, 台風による被害様式が樹木の階層内の位置により明瞭に異なることが示された。主要樹種間の台風撹乱の受け方の違いは, 発達した照葉樹林での報告とおおむね一致した。さらに, 主要樹種5種のうち4種は, 台風撹乱の受け方の違いに地形および二次林特有の林分構造はあまり影響せず, 台風撹乱に対する抵抗性の違いが直接反映されていると考えられた。