針葉樹人工林の間伐による渇水緩和機能の変化を評価する一環として, 小松ら (2007c) は間伐による年蒸発散量の変化を予測するためのモデルを作成した。このモデルは蒸散と遮断蒸発の部分からなり, モデルの妥当性は, 1) 間伐による蒸散量の不変性, 2) 間伐による遮断蒸発量の減少量, 3) モデルの流域スケールへの適用可能性の3点から検証される必要がある。本論ではおもに2) の検証を行った。間伐による遮断蒸発量の変化を計測した7事例を文献より収集し, モデルによる予測結果と比較したところ計測値とモデル予測値は概ね一致し, 2) がほぼ妥当であると思われた。3) については, 流域水収支法による蒸発散量の計測データが1事例しか得られなかったが, このデータについては計測値とモデル予測値は概ね一致し, モデルが流域スケールへ適用できる可能性が示唆された。本論では1) の検証は行われておらず, 3) の検証も不十分であるので, 将来の検証作業で必要となるデータを列挙し, 今後の計測研究に指針を示すことも行った。