北海道が2006年に実施した「エゾシカ食害による森林への影響調査」のデータをもとに, 幼齢人工林における食害の発生状況とエゾシカ生息密度指標 (エゾシカ保護管理ユニットごとのライトセンサスの平均値, 中央値および狩猟者の1人1日当りのシカ目撃数[SPUE]) との関係を検討した。常緑針葉樹, カラマツ類および広葉樹ともに, 調査林分における食痕の有無, あるいは調査木の食痕の有無と, すべての生息密度指標との間に有意な相関が認められた。広葉樹の食痕はシカ生息密度の低いユニットでも確認され, 広葉樹の食痕林分率が低密度地域でのシカの増加の兆候を示すサインの一つとなる可能性が示唆される一方, シカの生息密度が非常に高くならなければ食痕本数率の高い林分は出現せず, 林業被害として認識されないと考えられた。幼齢人工林の食痕に関する調査データが蓄積, 集計されることで, 当該地域の食害による被害リスクが予測できるのに加え, 既存の生息密度指標からも被害リスクを予測することが可能である。