スギには日本全国に七つの種苗配布区域があり, 福島県と岐阜県には, 第二, 三区の二つの配布区域が県内に存在する。われわれは, 同一県内の配布区域外へ種苗を配布した場合の妥当性を検討するため, 福島, 岐阜の両県について, 両配布区域の一般次代検定林に植栽された精英樹クローンの生存率と樹高のデータを用い, 産地の生存率および樹高の解析を行った。遺伝子型と環境の交互作用において, 福島県の生存率についてのみ有意差が認められ, 福島県の樹高, 岐阜県の生存率および樹高については有意差が認められなかった。積雪に対する生存率と樹高の相関において, 福島県の二区産クローンでは相関がなかったが, 福島県の三区産クローンの一部および岐阜県の二, 三区産クローンの一部では有意な負の相関が認められた。今回の結果より, 福島県と岐阜県における積雪に対するクローンの反応は異なり, 林業種苗法に基づく林業種苗の配布に関する規制は, 福島県では適切であるが, 岐阜県では必ずしも適切でないことが示唆された。