さし木が困難な高齢なブナで, 当年生シュートを用い, さし木増殖を検討した。平均胸高直径が75.6 cmの7個体から穂木を採取した。採穂したシュートは, 4個体では展葉後シュート伸長が終わっていたが, 他の3個体では展葉後シュートは伸長が完全に終了していなかった。乾燥に配慮して穂を運搬後, 48時間流水に浸漬させ, 24時間オキシベロン液剤で浸漬処理した。伸長が未完了であったシュートはすべてさし付け前に枯れ, さし穂として適さなかった。さし床を通気性不織布と遮光率70%の黒色寒冷紗で覆うことによって, 育成期間のさし床の平均気温は24.1ºC, 平均湿度は97.9%となり, 高湿度に維持された。さし付けた穂94本中, 40.4%が発根し, 41.5%でカルスが形成されたことから, 本手法を用いることによって, これまでにない高い発根率が得られ, 高齢なブナでのさし木増殖が可能であることが示された。