抵抗性クロマツ母樹の抵抗性要因を明らかにするために, 15クローンの枝片を用いて, マツノザイセンチュウ (Bursaphelenchus xylophilus ) 接種後の褐変に至る日数, および含水率のクローン間差を比較した。枝片の褐変に至る日数は, 7.9∼19.3日の範囲にあり, 1%水準で有意なクローン間差が認められた。枝片の採取方位, 母樹の植栽位置の影響は小さく, 組織変性の早さはクローンの特性であると考えられた。枝片の含水率は, 116∼138%に分布していたが, 5%水準でクローン間に有意差は認められなかった。母樹と実生家系苗との組織変性の早さには, 5%水準で有意な正の相関 (Spearmanの順位相関係数0.579) が認められ, 病態反応に関する母樹組織の性質がその実生家系苗の組織の性質にある程度は引き継がれていると考えられた。しかし, 母樹の組織変性の早さおよび実生家系の組織変性の早さは, ともに実生家系苗抵抗性強度との相関が低く, 全身抵抗性の構成要因として重要ではないことが示唆された。