ブナ種子の長期貯蔵条件を見出すため, ヨーロッパブナにおいて提唱された貯蔵条件が日本のブナにも適用できるかどうか検証した。種子の含水率を3段階 (弱乾燥, 11.3%; 中乾燥, 6.1%; 強乾燥, 4.0%) に調製して−20ºCで冷凍保存したところ, 弱乾燥処理は貯蔵4年目に発芽率が大きく低下し, 6年目に発芽能力を失った。強乾燥処理は貯蔵4年間で発芽率の低下はみられなかった。中乾燥処理で貯蔵5年まで高発芽率 (60%) が維持され, 貯蔵10年後にも発芽率は25%を示した。中乾燥処理の結果は追試験 (含水率6.6%, −20ºC) によっても支持され (貯蔵7年で発芽率60%程度を維持), 長期貯蔵のための最適含水率は6∼9%と考えられた。貯蔵8年間で種子含水率の増加は1%に留まった。貯蔵4年目から本葉展開に至った実生の8∼25%に形態異常がみられたが, その後苗畑での生育には支障なかった。今後は, 北海道で確認された貯蔵条件が国内の他地域でも適用できるかどうか検討する必要がある。