日本の冷温帯の代表種であるコナラとミズナラの堅果壊死の病原菌を明らかにするために, コナラとミズナラの壊死堅果に偽菌核を形成して発生する Ciboria batschiana の病原性と発生生態を調査した。 C. batschiana の菌叢をコナラとミズナラの堅果に接種した結果, 両種ともに堅果は壊死し偽菌核を形成し, 接種菌が再分離されたことから, C. batschiana にはコナラとミズナラの堅果を壊死させる病原性があることが確認された。岩手県のコナラ林では, 子嚢盤が発生した9月下旬に堅果が落下し, 10月には楕円形の一部壊死が認められ, 融雪後の4月には感染堅果のほとんどが偽菌核を形成していた。本菌は秋季にコナラ堅果に感染して病斑を形成し, その後融雪時期までに堅果全体を壊死させ偽菌核を形成すると考えられた。