スギ花粉に関する文献をレビューし, スギ林の花粉生産量を削減するためにどのような森林管理を行ったら良いか, 長期的な予測のもとに森林経営者のための指針 (案) を作成した。都府県を単位とすると, 土地面積当たりの花粉生産量の多い都府県でスギ花粉症有病率が高い傾向があることから, 花粉症対策のための森林管理の目標はスギ林面積の削減ではなく, 花粉生産量の多いスギの削減とするのが合理的である。間伐や枝打ちに大きな花粉生産量削減効果は期待できない。モデルの予測結果によると, スギ林の伐期短縮やスギ花粉を生産しない樹種への転換には大きな削減効果を期待できる。気候変化シナリオが予測する21世紀の夏の気温上昇と, 気候変化を緩和するための国策の一つとして全国的に実施されている人工林間伐の影響とにより, 花粉生産量が1割程度増加する可能性が指摘されている。この増分の削減は, 気候変化による悪影響への対策の目標になる。増分対策としてはスギ林の皆伐が有効であり, 皆伐を増やすことにより増分の相殺時期を早められる。また, 花粉生産量の多いスギ林を優先的に皆伐し, 花粉生産量の多いスギの再造林を減らすことによっても時期を早められる。