ハゼノキの在来品種と優良候補個体, および沖縄島の自生個体の葉緑体DNAにおける ndh F遺伝子と trn L-F領域の塩基配列を決定し, アジア大陸の個体と比較した。総塩基長2,403 bpにおいて9の塩基置換がみられ, 10の葉緑体ハプロタイプに分類された。日本本土由来の在来品種と優良候補個体にのみ存在した1ハプロタイプ (A) と, 沖縄島を含めた日本に存在した2ハプロタイプ (B, C) は, 大陸の個体にみられなかったが, 塩基置換数からハプロタイプAは大陸の系統と近く, BとCは大陸のハプロタイプからより離れていた。以上より, 在来品種や優良候補個体には, 大陸や南西諸島に起源を持つ異なる系統が混在している可能性があると推察された。