1990年代から, 九州地方を中心に針葉樹人工林伐採後の再造林を行わない伐採地 (以下, 放棄地) が増加してきた。本研究では, 1998年から2002年までに伐採が行われ, 2008年に再造林放棄と確認された九州全域の199点の放棄地について, 土壌侵食・崩壊の状況とシカの食害, タケ類の侵入, クズ等のつる性植物の繁茂といった木本樹種の回復 (以下, 植生回復) の阻害要因の状況を把握した。その結果, 重度の土壌侵食・崩壊が確認された放棄地が8点 (4.2%) とほとんど問題はみられなかったが, 植生回復の阻害要因は全体の125点 (62.8%) の放棄地で確認された。したがって, 現段階では再造林放棄地における土壌侵食や崩壊の発生は少ない一方, シカ害や竹林拡大などによって植生回復が遅れる可能性が示唆され, 再造林放棄が斜面傾斜によっては植生回復の遅れに伴う斜面崩壊防止機能の低下の危険性を含む複合的な問題であることが示唆された。