九州における再造林放棄地の植生回復は, 埋土種子・前生樹・新たな種子供給の三つの再生資源の量や種類によって左右されていた。回復初期は3者が重要であるのに対し, 回復初期から中期には新たな種子供給が重要となる。常緑樹の種子供給可能性が高い放棄地ほど照葉樹林を構成する樹木が優占する林分へ変化していた。シカの食害は本来回復するはずの植生の再生を阻害することで, 回復パターンに影響を与えていた。特にシカの食害が中∼重度の場合は初期に草地型植生になる場合が多く, 植栽などの積極的な管理を行う必要性が示唆された。非先駆性の常緑樹や落葉樹の種子供給可能性が低く, 埋土種子量が少ない放棄地では, 先駆性樹種の植被率が低い先駆性樹種侵入型の植生となり, その後の非先駆性樹種の種子供給可能性も低いため, 10∼15年経過しても先駆性樹種が優占する可能性があるが, 更なるモニタリングが必要である。その他の常緑樹/非先駆性落葉樹が優占するパターン, 先駆性樹種の優占後, 10∼15年後に常緑樹/非先駆性落葉樹が混交するパターンを示す放棄地は早急な労力投入の必要性は低いが, 照葉樹林に回復するか長期的なモニタリングが必要であろう。