鬼怒川流域の本流・支流の82箇所の水辺林の群集組成を類型化し, その分布の成因を立地環境から解析した。主成分分析の結果, 立地環境は河川の流路幅と谷底幅, 標高と相関の高い第1主成分と水面からの比高と相関が高い第2主成分で指標された。群集組成はトチノキ型, ケヤキ型, 混交型, ヤハズハンノキ・ヒロハカツラ型, サワグルミ型, オオバヤナギ・オノエヤナギ型, オオバヤナギ型, ハルニレ型, コゴメヤナギ型の九つに類型化された。狭い氾濫原を持つ渓畔域では, 流路付近にオオバヤナギ型等, 隣接する高位氾濫原から谷壁斜面にかけてはトチノキ型等が成立していた。標高800∼1,400 mの山地帯では谷底幅が広いために多様な微地形が形成され, 6タイプの水辺林が分布していた。また, 山地帯に広く出現した型は, 支流では本流よりも低標高域に分布する傾向があった。これは, 低標高でも支流は上流部に似た谷底地形を呈するためであると考えられた。このように, 本流と支流をあわせると広い標高域に多様な河川地形が存在し, 多様な森林群集が分布可能であることが示唆された。