ニホンツキノワグマ ( Ursus thibetanus ) の餌資源として堅果の豊凶を予測するために, ブナ科3種 (ブナ・ミズナラ・コナラ) の雄花序数と堅果数の関係を調べ, 雄花序の落下数から健全 (成熟) 堅果数を推定することを試みた。ブナでは, 雄花序の落下数の年変動は, 総堅果, 健全堅果の落下数と同調し, 雄花序数と健全堅果数との間での回帰式は高い決定係数を示した。一方, ミズナラとコナラにおいては, ブナほど同調性は強くなく, 雄花序数と成熟堅果数との間での回帰式は低い決定係数を示した。しかしながら, 雄花序数によって推定された健全 (成熟) 堅果数から判定した豊凶は, 各年度での3種の着果度のモニタリング調査による結果とほぼ一致した。以上の結果から, 雄花序の落下数を把握することは, 初夏のうちにおおよその豊凶の傾向を提供するためには有効と考えられる。