施業が森林生態系に及ぼす影響について, 林床植生の変化は指標となり得る。北海道中央部の針広混交林において, 約1 haの択伐区と対照の保存区とを伐採から5年間観察し, 林床に生育する維管束植物の種多様性の推移, およびその林内分布に影響する要因を調べた。択伐区では保存区と比較し, クマイザサの被覆が増大した一方で, 種数およびShannon関数に差異はみられなかった。主な40種の分布について, 択伐の有無, 作業による地表撹乱, 微地形, 光環境, 植生被覆, および過年度の分布の各要因をGLMの説明変量とし, AICを基準に最も説明力の高いモデルを選択した。分布の重要な要因として, 多くの種について過年度の有無, 次いで光環境と植生被覆が検出された。択伐の有無, 地表撹乱および微地形は, 直接的な要因としては検出されなかった。以上のように, 択伐によるササの繁茂が定量的に示され, また, いくつかの種に影響があることが示された。しかし, 林分全体の種多様性に大きな影響は認められなかった。択伐では光や地表面の撹乱が局所的であること, また林床植物は多年生が多いことにより, 伐採から短期間では影響が現れにくいと考えられる。