多雪地帯のスギ人工林皆伐跡地における実生更新過程を明らかにするため, この地域で一般的にみられる前生樹が少ない林分において, 伐採後に発生した高木性木本の消長を5年間追跡調査した。伐採後5年間に発生した高木性木本は総出現種数30種, 99,400±64,200本/haで, そのうち8割以上が伐採当年に発生した。当年発生実生の86%はアカメガシワとカラスザンショウの2種が占めたが, これらの先駆性樹種は, 伐採5年目までに著しく生存本数が減少し, 樹高成長も停滞するなど, 短期間で衰退する傾向を示した。替わって生存率が高く, 樹高成長も著しかったのが, オニグルミ, ミズキ, ホオノキ, ウワミズザクラなどのギャップ種であった。本調査地のように積雪が多く, ススキなどの下層植生の繁茂が著しい条件下では, 早期に先駆性樹種の衰退が起こり, このようなギャップ種を優占種とする林分がまず成立する可能性が高いと考えられた。