近年, DNA分析により, 九州地方のスギ在来品種は一つの品種が複数のクローンで構成されていることが明らかとなったが, 在来品種間や在来品種内-遺伝子型間の遺伝的な類似性に関する研究は未だ行われていない。そこで, 九州の主要な挿し木品種を対象に, マイクロサテライト (SSR) マーカーを用いたクローン識別および遺伝的類似性の評価を行った。9遺伝子座の核SSRマーカーを使用したクローン識別の結果, 19品種 (279個体) のスギは26の遺伝子型に分類された。メアサ, アヤスギ, ヤブクグリ, オビアカは複数の遺伝子型で構成されており, それぞれ主なクローンが存在した。また, 固有の遺伝子型を持たず他の品種と同じ遺伝子型を持っていたものがあった。遺伝的類似性については, 19の遺伝子型で, 33遺伝子座のSSRマーカー (9個の核SSR, 24個のEST-SSR) を用いて評価した。その結果, 九州の挿し木品種は比較的幅広い遺伝的変異を持っており, 挿し木品種内-遺伝子型間には, 比較的類似した遺伝変異を保有している傾向が明らかとなった。