無下刈による雑木からの被圧と除伐を経たスギ挿し木クローンの樹高と根元直径の成長を, 階層ベイズモデルで解析した。モデルは成長式の微分型を基に, 応答変数を年間成長量, 説明変数を期首サイズ, 被圧指数とその係数および除伐後の個体の無被圧個体に対する成長量の割合で構成した。各要因に平均値としての固定効果とクローンの変量効果を含めた。被圧指数は, 対象木から半径 R 以内かつその樹高に対する相対高β以上の雑木の梢端を見上げる受光角の和とした。偏差情報基準 (DIC) の結果から, R とβはそれぞれ1.5 mと0.75とした。推定した固定効果から, 根元直径の成長は樹高よりも雑木による被圧を受けやすく, 除伐後の回復が速い傾向がみられた。クローンの変量効果から, 両形質で成長曲線の初期勾配および最大サイズにクローン間差がみられた。樹高成長は落葉樹による被圧に対する反応と解除後の回復の速さにクローン間差がみられたが, 根元直径には認められなかった。クローンごとの初期勾配と成長回復の速さの間に弱い正の相関がみられた。以上から, 下刈り省力化に向くクローンの特性について議論した。