複層林において冠雪害リスクの高い下木の特徴について検討するため, 冠雪害が生じた岩手県のスギ-スギ複層林 (上木109年生, 下木19年生) において被害状況と諸要因との関係を解析した。下木の形状比の範囲は63∼131, 平均94.7であり, 下木の本数被害率は28.4%, そのうち重度被害 (幹折れ, アーチなど) は21.2%であった。形状比の高い個体ほど被害が多い傾向が明瞭であったが, 上木樹冠縁からの距離では明瞭な傾向がみられず, ほとんど形状比のみによって被害有無を説明することができた。本研究の結果は, 形状比の影響がとくに明瞭に表れ, 上木樹冠による庇護効果の影響があまり表れなかった点で, 従来の報告とは異なっていた。複層林における冠雪害リスクの高い個体の特徴は事例によってさまざまであり, 上木の樹冠の隙間や樹高などの林分構造により被害発生機構が異なることが示唆される。