スギ花粉症対策の育種母材料として利用するため,3年生の10,902本のタテヤマスギ(実生苗)から雄性不稔スギを探索した。その結果,雄性不稔と思われるスギを二個体選抜することができた。これら二個体のスギの雄花は,外見上正常なスギと変わりがなく,春先の開花期には花軸を伸長させるが花粉を全く飛散させなかった。さらに,電子顕微鏡で調べてみると花粉同士が崩れた形で融合しており,正常な花粉はほとんど認められなかった。これらの個体は染色数に異常がなかったことから,花粉形成に関与する遺伝子の突然変異(雄性不稔遺伝子)によって雄性不稔性は引き起こされていると思われた。また,今回の調査結果では5,451分の1の頻度で雄性不稔個体が出現した。この方法は3年生の実生苗を材料に用いるので少ない栽培面積と短い生育期間で済み,雄性不稔スギを選抜するのに有効な手法であると考えられた。