茨城県北部のブナ•コナラ自然林を流れる小渓流において,春期に,炭素,窒素安定同位体を用いた食物網の解析を行った。落葉や小枝などのリターを主成分とするCPOM(Coarse Particulate OrganicMatter)は,渓床の付着藻類よりもδ13Cが低かった。FPOM(Fine Particulate Organic Matter)は,CPOMに極めて近い同位体比を示すことから,大部分はリターが細かく分解した有機物と考えられた。δ13C一δ15Nグラフを描くと,底生動物の多くの分類群とイワナはCPOMやFPOMを起点として右上がりに連なっており,炭素,窒素源をCPOMやFPOMに依存していると考えられた。藻類の近くにプロットされたのは,一部の底生動物のみであった。以上より,この渓流の食物網は,藻類による現地性有機物生産よりも,森林からの外来性有機物供給に強く依存していると考えられた。