山地斜面上のスギ幼齢林において,斜面の上部と下部に生育するスギ樹木を対象に,ヒートパルスセンサーを用いて樹液流速を測定した。また,同時に斜面上下部それぞれにおいて気象観測を行った。観測結果からは,降雨終了後および朝の蒸散開始時刻にずれが生じているという現象が確認された。多くの場合に斜面上部の方が先に蒸散を開始しており,その時間差は平均で58.5分であった。また,斜面上下部間で微気象条件にも差異があることがわかった。朝の蒸散開始の時間差は日中の降雨終了後よりも平均値および日々変動が大きかった。また,朝の蒸散開始の時間差は斜面上下部間の大気飽差•日射量の違いと強く関係していた。したがって,蒸散開始の時間差は斜面上下部間の大気飽差•日射量の差異によるものと考えられた。