ニホンキバチのヒノキ生立木への産卵に対する,ヒノキ生立木の生育状態(胸高直径,樹皮厚),ニホンキバチ雌成虫の体サイズおよび昆虫寄生線虫感染の影響を,ニホンキバチの産卵試験によって検証した。線虫の感染によりニホンキバチの蔵卵数は体サイズの小型化によるもの以上に減少し,産卵率も半減した。ヒノキの生育状態とニホンキバチ産卵率との関係は,線虫が感染していないニホンキバチでは相関関係はなかったが,感染したニホンキバチでは負の相関が示唆された。ヒノキの生育状態,ニホンキバチの体サイズおよび線虫感染の有無に対する産卵数と産卵率の重回帰分析の結果,ヒノキの生育状態は産卵数や産卵率の大小に寄与しておらず,線虫感染の有無とニホンキバチの体サイズが産卵に大きく関わっていることが判明した。従って,ヒノキの成長促進によるニホンキバチの産卵回避効果は低いものと考えられる。