採種園研究に分子マーカーが利用されることにより,従来技術では制限のあった採種園における構成クローンの同定,園外からの花粉混入率,自殖率,次代に対する各構成クローンの花粉親としての寄与率に関する知見が急速に蓄積されつつある。これらの研究から,数%程度の誤植,30%以上の花粉混入率,5%以下の自殖率が多くの採種園で一般的であることが示された。また,報告された構成クローンの花粉親としての寄与率は,いずれも均等交配から著しく偏っていた。これらの知見から,1)採種園構成クローン以外の混入個体を除去するために,分子マーカーを用いてクローンの配置確認を行う,2)花粉混入率を低下させるために,同樹種の少ない場所に採種園を造成する,着花促進,SMP処理などによって空中花粉中の園内花粉の割合を大きくする,3)自殖率を低下させるために,クローンあたりのラメート数を少なくする,4)均等交配を実現するために,各クローンの雄花着花量を均等化する,開花期の著しく異なるクローンを除去する,といった遺伝的管理が重要だと考えられた。