関東育種基本区の5~20年次の共通12精英樹クローンを用いたスギ地域差検定林21カ所のデータを解析し,遺伝子型と環境の交互作用(GEI)と遺伝獲得量( ΔG )の両面から現行の育種区の区分および新たに試みる地域区分の妥当性を検討した。関東育種基本区は全測定年次で有意にGEIが大きくなり,現行の育種区の区分は,クローンと地域の交互作用よりクローンと地域内検定林の交互作用が大きく,GEIの妥当な育種区とそうでない育種区が混在し,また ΔG も育種効果のある育種区とない育種区が混在した。マクロな環境条件である平均気温,降水量,積雪量の気象因子を用いて主成分分析を行い,この結果に基づき関東育種基本区を地域区分したところ,内陸側と太平洋側に区分され,これに検定林データを考慮した72とおりの地域区分の一つは,GEI, ΔG の両面で現行の育種区より妥当であると判断できた。一方,現行の育種区を単純に二地域に統合した場合は,GEI, ΔG の両面からあまり適切ではないと考えられた。