本研究では,伐採直前のスギ人工林における立木状態での炭素貯留量を基準に,植林から製材までの一連の木材生産工程に関する炭素収支分析を行った。福岡県星野村村有林を調査対象とし分析した結果,対象プロットでの立木状態での炭素貯留量は201.53Ct/haとなり,次の丸太状態では100.92Ct/ha,さらに製材品状態では65.16Ct/haと貯留量が減少することがわかった。さらにエネルギー消費による炭素排出量を推定した結果,「植林•育林工程」では立木状態での炭素貯留量の0.13%,「素材生産工程」では0.39%,そして「製材工程」では3.85%に相当する炭素が排出されることがわかった。林地残材•製材廃材の炭素含有量は立木状態の炭素貯留量の67.66%に相当するが,仮にこれらをチップ燃料として利用すると,熱量換算でA重油5.13×104L/haの代替となり,その燃焼で発生する炭素量は立木状態の19.33%,チップ化工程での炭素排出量を考慮すると18.08%に相当する。