東北地方内陸部の森林流域における渓流水質の特徴と,融雪期の水質形成要因を明らかにするため,姫神山試験地の渓流において水質調査を行った。姫神山試験地の渓流水の主要イオン濃度は全国平均と比べて低かった。水質は降水や融雪に伴う流量の変化に伴っておもに変化し,流量とpH,ECおよびNa+,Mg2+,Ca2+,HCO3-, Cl-,SiO2濃度との問には負の相関が,流量とNO3-とSO42-濃度との間には正の相関がみられた。融雪初期には,積雪から高濃度の溶存成分を含む融雪水が流出するために,Na+,Cl-,NO3-およびSO42-濃度は上昇した。一方,融雪最盛期から後期には,融雪初期に比べて低濃度の融雪水が付加されることによる希釈効果のため,降雨によるピーク流出と同様にNa+,Cl-およびSiO2濃度は低下した。しかし,これらの期間においても,流量の増加に伴うNO3-とSO42-濃度の上昇がみられた。その要因として,両イオンともに積雪からの流出と土壌表層からの溶出が考えられたが,両者の濃度変化過程からSO42-は前者の,NO3-は後者の寄与がより高いと推定した。