本研究では従来から問題視されてきている,ヒノキ林における表層土砂の動態を観測•計測した結果を扱っている。対象林分は高知県香美郡香北町に位置するヒノキの人工林である。観測プロットは斜面上の約1m2の部分であり,各プロット内で侵食•堆積した土砂量の計測•算定を行っている。計測作業は通常は降雨イベントの直後に,そして冬季には少ない場合でも2カ月に1度実施した。1995年より長期間観測を続けているプロットIでは,観測期間を通じて侵食傾向を示したが,途中で実施された間伐作業によると思われる侵食傾向の緩和がみられた。侵食傾向は降雨量が少ない冬期にもみられる。2000年1月17~2003年11月24日の観測結果から得た年間の平均侵食土砂量は7.47~2.33mmで,いずれのプロットにおいても移動土砂の変動のトレンドは類似している。年末から年始の乾燥時期にかけて斜面上方から,あるいは石柱の破壊による不安定土砂の供給を受け一気に堆積傾向に転じ,その後1年をかけてそれぞれの部位での変動幅を示しつつ侵食されていくことが認められた。